グループダイナミクスってなに?
皆さんはグループをどの様に見ていますか?
同僚、同志、仲間の集まりのように人に着目していませんか?
実は、グループとは、それだけの集合ではありません。
グループダイナミクスでは、人の集まりの他に、周りの道具やルール等も含めてグループを指します。
そうした考えを持つグループダイナミクスを知っていただくために私たちは、 6/24(日)にイベントを開きました。
グループダイナミクスとは、グループ(社会・組織等)の特性を解析・研究し、そのグループをより良くしようとする学問です。
そこで、イベントでは、グループダイナミクスを学んで帰っていただくために、実際の社会のシュミレーションを体験できる『ミニ社会ゲーム ※1』というゲームを企画しました。
こうしたことから、今回は、『ミニ社会ゲーム』の様子とグループダイナミクスの物の見方について書きたいと思います。
イベントでは二十名弱の方々に来て頂きました。
下の写真は、イベント当日の様子です。
ミニ社会ゲームでは三つの地域に分かれてもらい、体験してもらいました。
全体として地域同士の関係は非常に強いものになりましたが、一方で、地域間の関係はあまり良くなく、騙し合いや戦争が起こりました。
そのせいか、4ターム目で社会が崩壊し、ゲームが終了となりました。
そんなミニ社会ゲームについての感想として、参加者からは「戦争について考えることができた」や、「社会を体感出来てよかった」といった声をいただきました。
また、ミニ社会ゲームでの出来事をグループダイナミクスの規範理論や活動理論に即して解説を加えたことから、参加者の新たな視点や閃きがあったようでした。
折角ですので、読んで下っている方々にもグループダイナミクスの基礎について少しでも知って頂ければと思います。
■グループ・ダイナミクスとは?
さまざまな集合体(小集団、組織、群集、コミュニティ、社会等)の全体的性質(集合性)の動態を研究する人間科学です。
他の経営学や人類学との違いは、研究者が現場に飛び込み、当事者と協同的実践を展開する点です。
では、集合性にはどういったものがあるのでしょうか?
■集合性と操り人形
集合性には、物理的集合性と意味的集合性があります。
物理的集合性とは、机や椅子のような道具であったり、グループの周辺環境を指します。
一方、意味的集合性とは、ルールであったり、慣習といったものの考え方の基本となるものを指します。
そうした中で、グループダイナミクスは、少し変わった考え方を持っています
みなさんは、普通、『人間は、自分の頭や心で物事を考え、行動している』と考えていませんか?
しかし、グループダイナミクスでは、人は集合性の操り人形であるとされています。
どういうことかと言うと、グループの中で一般的とされている行動や見方によって人間は行動させられているということです。
具体的には、日本では、勉強というものに大きな意味があり、したくもないのに強制されてしてきた人が大勢いるのではないでしょうか?
まさに、これが日本という大きな集合の集合性によって人々が行動させられている例です。
実際には、すべての行動が集合性によって決定づけられているというのがグループダイナミクスの基礎概念です。
■規範理論
では、少し学問的な話に入ります。
グループダイナミクスの研究者が集合性を理解するためには、より体系立った方法が必要です。
そこで、規範理論というものが使われています。
そもそも規範とは、「そんな行為もあるよね」と皆が暗黙のうちに理解している行為の集合のことです。
では、規範理論にはどんなものがあるのでしょうか?
・『である規範』
"である規範"とは、事実認識であり、物事に対してこういう物であるという認識のことを指します。
例としては、チョークは、書いたり、注意をひくために黒板とぶつけて音を出すものという認識が皆さんならあると思います。
しかし、もしそれを誰かが美味しいと言って食べていたら「うそだ〜」と思いつつ、それを止めずにそういう使い方もあるのかと納得すると思います。
そうしたものを"である規範"といいます。
・『べき規範』
では、"べき規範"とは、何かと言うと、価値認識であり、"である規範"とは違い想定の範囲外の行動をした人に対して行動を修正させようとする規範のことです。
具体例としては、遅刻したものに対して人が指摘し、行動を是正させようとします。
このとき是正させようとした人の"べき規範"がこのような行動をこの人にさせたと考えます。このような規範を"べき規範"といいます。
こうした規範理論を用いて研究者は、グループの集合性を解析しています。
では、どうやってグループをより良くするためのvisionを研究者は見つけ出しているのかについて、次に紹介したいと思います。
■活動理論
グループダイナミクスでは、グループの問題点や解決方法を見つけるために活動理論というものを用います。
活動理論とは、主体と対象だけでなく、その周りの道具やルール、共同体や対象と主体の分業について視野を広げてみてみるというものです。
例えば、医者(主体)が患者(対象)を治すとき、治療が上手くいかないことがあります。そんな時、医者をやぶ医者というのではなく、医療機器や薬(道具)が駄目なんじゃないか、看護婦や医療補助員(共同体)が駄目なんじゃないかと医者以外にも視点を向けることで、新たな解決方法が出来るかも知れません。
こうした、規範理論や活動理論を是非行き詰まった時や悩んだ時に利用してみてください。
新たな解決方法が見つかるかも知れません。
最後に、お手伝い頂いた方々及び参加者の皆様(勿論、読んでくださった皆様)有難うございました。
※1 ミニ社会ゲームとは、アメリカの社会学者 W. A. Gamson によって作成された模擬社会ゲームです。
これは、豊かな地域集団であるマジョリティと貧しい地域集団であるマイノリティに分かれ、社会問題に対処しながら各自が生存し、目標達成を目指すシュミレーションゲームです。また、このゲームは、社会心理学や社会学の教育ゲームとして利用され、欧米では高い評価を得ています。
【参考文献】
コミュニティのグループダイナミックス 杉万俊夫 編著 京都大学学術出版会
ビデオ講座 杉万俊夫 先生 グループダイナミックス