Xstudyが育む「学際人」
こんにちは、木下です。
以前のブログで紹介した読書会で、まず一冊目『大学教育について』(J.S.ミル、岩波文庫)を読み終えました。この本は、150年ほど前にJ.S.ミルがある大学の名誉学長に就任した際の演説を収録しています。そして、これが実に素晴らしい。特に、「教養」や「異分野との交流」を重視する僕たちXmajorとしてはとても共感でき、また勉強になりました。
そこで、今回はこの本の一部を紹介し、さらに現在行っている学際研究プログラム「Xstudy(クロススタディ)」との関係を考えてみたいと思います。
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『大学教育について』ではまず冒頭で、大学の目的が語られます。
大学の目的は、熟練した法律家、医師、または技術者を養成することではなく、有能で教養ある人間を育成することにあります。(p.12)
ミルは、「大学は職業教育の場ではない、一般教養教育が重要なのだ」という立場をとります。そして、「教養ある知識人」に求める知性というものを次のように表現します。
人間が獲得しうる最高の知性は、単に一つの事柄のみを知るということではなくて、一つの事柄あるいは数種の事柄についての詳細な知識を多種の事柄についての一般的知識と結合させるところまで至ります。(p.28)
さて、どうでしょう?これはつまり、
「自分の専門分野についてはとても詳しく知っていて、かつ専門以外の多くの分野については“一般的知識”を知っていること。そしてそれらを結合させるレベルまでならないとダメですよ」
と言っているわけです。ちなみに“一般的知識”をもつというのは、「主要な真理についてなら、徹底的に知っている」ことだそうです。
なかなか容易ならざる気配がしますね…(笑)
さて、最後にもう一つだけ引用します。ここまでかなり大変そうな感じがしましたが、ここでは「何の為にそこまで学ぶのか」を語ってくれます。
われわれが学ぶ目的は、将来自らの仕事に役立つような知識を少しでも多く身につけるということにあるのではなく、むしろ、人間の利害に深く関わるあらゆる重要な問題について何らかの知識をもつことにあるのだ(p.30)
エネルギー問題や地球温暖化問題、格差・貧困の問題、あるいは税制・社会保障についてなど、いま僕たちの社会にはたくさんの「人間の利害に深く関わる重要な問題」があります。これらについて何らかの知識をもつこと。それも、テレビ、新聞、ネットなどのメディアを通じた情報を得て「知っている」気になるのではなく、主要な真理に基づいて自分の頭で考えられるということが大切なのだと思います。
そして、Xstudyではまさにこのことに取り組んでいる、というわけです。
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ということで、ここからXstudyのお話です。Xstudyは「学際研究」ということに取り組むプログラムです。1チーム4〜5人で3ヶ月半、チームごとに選んだテーマに対して学際的アプローチで研究をしてみよう!というものです。
(参考ブログ➡新プログラム『Xstudy』START!! *最初と最後のパラグラフをご覧下さい。)
さて、僕たちは「学際研究」に取り組もうと思いました。それは、現在の社会が抱える問題の多くは非常に複雑で、複数の学問分野からの観点、知性をうまく連携・機能させて解決に臨む必要があるからです。したがって、今後ますます学際的な取り組みが出来る人が求められているというわけです。
そこで、「学際的な取り組みが出来る人」について考えてみます。
まず「学際」とはどういうことでしょう?
これを考えるために、「〜際」という表現をする言葉を他に探すと、「国際」があります。これと比較してみましょう。
「国際」を英語にしてみると、「international」ですね。分解してみると、
inter-(〜間の)+national(国家の)
です。そして、「国際的に活躍する人」などの意味で、「国際人」と言ったりします。「国際人」は
internationally-minded person
国際的な 精神をもつ 人
となります。
これと同様に考えてみましょう。「学際」は
inter-(〜間の)+disciplinary(学問分野の)
です。したがって、「学際的に活躍する人」などの意味で「学際人」という言葉を使うとすれば
interdisciplinarily-minded person
学際的な 精神をもつ 人
となります。(注:これは僕の造語です。)
“interdisciplinarily-minded person”、このmindedはただ単に「やる気はあります!」というだけではダメで、もっと多くを要求します。
「国際人」に語学力から相互の文化理解、どこでも通用する仕事の実力などが求められるのと同様、「学際人」にはそれ相応の幅広く確かな教養、コミュニケーション能力、自分の軸となる専門性などが求められます。
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さて、「学際人」という言葉の意味を考えてみたところ、これもそんなに甘くはなさそうでした。しかしこれは、本稿前半の『大学教育について』で語られている「有能で教養ある人間」に通じているように思います。
ミルは、「社会に起きているとても重要な問題に向き合っていくために、学生は多くを学ぶのだ」と語りました。
それは大変だけど、僕たちは学ぶことから逃げない。
そして「この世界を自分が生まれたときよりも少しでも良いものにしてこの世を去」ることができれば、あるいはそう想って日々大切に生きていれば、それは幸せなことだと思います。(同書、p.106)
これを読まれた皆さんはどのように考えるでしょうか?
さて、ところでXstudy参加者の皆さん!いまの努力は必ず力になるはずです!残り1ヶ月、大変ですが頑張っていきましょう!
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